移動スーパー「とくし丸」での開業を考えている方も多いと思われます

私も豆腐の移動販売先で「とくし丸」のオーナーさんと良く会います

決してライバル関係ではなく、お互いに情報交換する良好な関係を築いています

 

しかしながら「とくし丸」のオーナーさんからは現実的に厳しい実情も聞いています

 

今回の記事では下記の件に関して深堀していきます

 

  • とくし丸の失敗例
  • 過酷すぎる労働時間
  • 成功するオーナーの特徴

とくし丸の失敗例

「とくし丸」に限らず、独立開業には常にリスクが伴います。特に移動販売という形態は、一般的な店舗型ビジネスとは異なる特性を持つため、特有の失敗要因が存在します。

 

売上不振による経営難

最も直接的な失敗要因は、やはり売上の不振です。

 

  • 顧客開拓の失敗: 開業当初は、とくし丸の知名度や本部からの支援があるとはいえ、最終的にはオーナー自身が地域に根ざし、顧客との信頼関係を築く必要があります。訪問先での声かけ、地域イベントへの参加、口コミの促進など、地道な努力が不可欠です。これがうまくいかず、顧客数が伸び悩むと、安定した売上を確保できません。

 

  • 競合他社の存在: 地域によっては、既存のスーパーの宅配サービスや他の移動販売サービス、さらには地域の商店など、競合が存在します。とくし丸ならではの利便性や品揃え、そしてオーナーの人柄で差別化できなければ、顧客を奪われてしまう可能性があります。

 

  • 商品構成のミスマッチ: 地域住民のニーズに合わない商品構成では、売上は伸びません。高齢者が多い地域であれば、少量パックの商品や日持ちする商品、調理が簡単な食品などが求められます。一方で、特定の嗜好を持つ顧客層がいる場合は、それに応じた品揃えも重要です。本部の指導に従いつつも、自身の裁量で商品を入れ替える柔軟性が求められます。

 

  • 天候の影響: 移動販売は天候に左右されやすいビジネスです。雨や雪、猛暑、強風など、悪天候時には客足が遠のき、売上が大きく減少する可能性があります。これに対する備え(悪天候時の販売戦略や予備日の設定など)が不十分だと、経営を圧迫します。

コスト管理の失敗

売上があったとしても、適切なコスト管理ができていなければ利益は残りません。

  • 車両維持費・燃料費: 移動販売車の購入費用(リース費用)、維持費、そして日々の燃料費は大きな固定費となります。効率的なルート設定ができていないと、燃料費が無駄にかかり、利益を圧迫します。

 

  • ロイヤリティ・仕入れコスト: とくし丸の場合、本部へのロイヤリティや提携スーパーからの仕入れコストが発生します。これらの費用を考慮した上で、適切な利益率を確保できる価格設定が必要です。

 

 

  • 人件費(家族雇用の場合など): 家族を従業員として雇用する場合、その人件費も考慮する必要があります。安易な家族経営は、かえってコスト増につながることもあります。

オーナー自身の適性の欠如

ビジネスモデル以前に、オーナー自身の適性が合わないケースもあります。

 

  • 営業・接客スキル不足: 移動販売は、顧客との対面販売が基本です。明るく、親しみやすい人柄であることはもちろん、顧客のニーズを汲み取り、適切な商品を提案する営業スキルも求められます。これが苦手だと、顧客との関係構築に苦戦し、リピーターが増えません。

 

  • 体力・精神力の不足: 後述する「過酷な労働時間」にも関連しますが、体力的にきつい、精神的に参ってしまうといった状況に陥ると、事業継続は困難です。特に一人で事業を回す場合、全ての業務をこなす必要があるため、強い意志と体力が不可欠です。

 

  • 計画性・自己管理能力の欠如: ルート設定、在庫管理、顧客管理、会計処理など、多岐にわたる業務を計画的に実行し、自己管理できる能力が求められます。これが欠けていると、業務が滞り、顧客へのサービス低下や経営の悪化を招きます。

過酷すぎる労働時間:移動販売の現実

インターネット上で「過酷」と評される労働時間は、とくし丸に限らず、多くの個人事業主、特に移動販売業に共通する課題です。

長時間の拘束

  • 早朝の仕入れ・積込み: 朝早くから提携スーパーに出向き、その日の販売商品を仕入れ、車両に積み込む作業が必要です。商品の鮮度維持のためには、この作業を怠ることはできません。

 

  • 日中のルート販売: 日中は、事前に設定したルートに従って各家庭や施設を訪問し、販売を行います。顧客とのコミュニケーションや商品陳列、会計処理など、休憩を挟むことなく動き続けることになります。

 

  • 夕方以降の在庫整理・翌日準備: 販売終了後も、売れ残った商品の整理、車両の清掃、翌日の仕入れ計画、伝票整理、会計処理など、事務作業が残ります。日報作成や顧客情報の更新なども含まれます。

肉体的・精神的負担

  • 運転時間の長さ: 広いエリアをカバーするためには、長時間の運転が必要になります。特に不慣れな道や悪天候時は、運転による疲労が蓄積します。

 

  • 荷物の運搬: 商品の積込み・積下ろしはもちろん、顧客宅まで商品を運ぶこともあります。特に夏場の飲み物や冬場の重い野菜など、体力を使う場面は多々あります。

 

  • 立ちっぱなし・動きっぱなし: 停車中は立ちっぱなしで接客し、移動中は運転と、座って休憩する時間はほとんどありません。

 

  • 人間関係のストレス: 多種多様な顧客と日々接するため、時には理不尽な要求やクレームに対応する必要も出てきます。また、孤独な作業が多い中で、精神的なストレスを感じることもあるでしょう。

 

  • 天候への対応: 猛暑の中での販売、極寒の中での運転など、天候が厳しい日でも営業は続きます。体調管理には常に気を配る必要があります。

休日が取りにくい

  • 週6日稼働が基本: 多くのとくし丸オーナーは、週6日稼働を基本としています。顧客は毎日買い物を必要としているため、安易に休むことができません。

 

  • 家族の協力が不可欠な場合も: 一人で全ての業務をこなすのは限界があるため、家族の協力を仰ぐケースも少なくありません。しかし、家族も巻き込むことで、家庭全体の負担が増える可能性もあります。

 

  • 有給休暇や長期休暇の取りにくさ: 個人事業主であるため、一般的な会社員のような有給休暇の概念はありません。長期休暇を取るには、その間の売上が途絶えるリスクを許容する必要があります。

成功するオーナーの特徴

厳しい側面がある一方で、とくし丸で成功しているオーナーも数多く存在します。

共通する特徴を理解することは、開業を目指す上で非常に重要です。

強固な顧客志向とコミュニケーション能力

  • 「御用聞き」の精神: とくし丸の最大の強みは、顧客の自宅まで商品を届ける「御用聞き」であることです。顧客の顔と名前を覚え、好みやニーズを把握し、それに応じた商品提案や世間話ができるなど、きめ細やかなコミュニケーションがとれるオーナーは顧客からの信頼を得やすく、リピーターを増やします。

 

  • 傾聴力と提案力: 顧客の「こんなものが欲しい」「これがあったら嬉しい」といった声に耳を傾け、それを商品構成やサービスに反映させる柔軟性が必要です。

 

  • 「移動するコンビニ」としての役割: 高齢者にとっては、商品を購入するだけでなく、話し相手がいること自体が大きな価値となります。単なる物販だけでなく、地域コミュニティの一員として、顧客の生活を支える意識が大切です。

自己管理能力と計画性

  • 時間管理: 早朝の仕入れから夜間の事務作業まで、限られた時間を最大限に有効活用するための効率的なスケジュール管理が不可欠です。無駄な時間をなくし、効率的に業務をこなせる能力が求められます。

 

  • ルート最適化: 訪問する顧客の家を効率的に回るルートを常に検討し、時間と燃料費のロスを最小限に抑える工夫ができるオーナーは、収益性を高めることができます。

 

 

  • 在庫管理: 売れ筋商品や季節商品を把握し、適切な在庫量を維持することで、廃棄ロスを減らし、かつ機会損失も防ぐことができます。

 

  • 顧客管理: 顧客ごとの購入履歴や嗜好、会話の内容などを記録し、次の訪問に活かすなど、データに基づいた顧客管理ができると、よりパーソナルなサービスを提供できます。

 

 

  • 会計・経理知識: 日々の売上や経費を正確に記録し、資金繰りを把握できる基本的な会計・経理知識は必須です。

精神的なタフネスと問題解決能力

  • 困難に立ち向かう忍耐力: 天候不順、クレーム対応、売上不振など、事業には様々な困難がつきものです。それらに直面しても諦めずに、粘り強く解決策を探し、実行できる精神的な強さが求められます。

 

  • 自己肯定感と前向きな姿勢: 「自分は地域に貢献している」という意識や、日々の業務に喜びを見出すことができる前向きな姿勢は、長期間事業を継続する上で非常に重要です。

 

  • 柔軟な思考と適応力: 地域のニーズの変化や競合の登場など、常にビジネス環境は変化します。それに合わせて、自身のサービスや戦略を柔軟に修正・適応できる能力が必要です。

 

  • 健康管理: 長時間労働を乗り切るためには、自身の体調管理を徹底することが不可欠です。適度な休息や運動、バランスの取れた食事など、健康を維持するための努力も成功要因の一つです。

まとめ

移動スーパー「とくし丸」での開業は、社会貢献性が高く、やりがいのある仕事である一方、決して楽な道ではありません。「失敗例」や「過酷な労働時間」といった懸念は、このビジネスモデルに内在するリスクや厳しさの表れと言えるでしょう。

 

これらの課題は、適切な準備とオーナー自身の努力、そして何よりも「成功するオーナーの特徴」で挙げたような資質を備えることで、十分に乗り越えることが可能です。