移動スーパー「とくし丸」は、買い物に不便を感じる高齢者や地域住民にとって、なくてはならない存在となっています。
しかし現実には「とくし丸は赤字なのではないか？」
・・・との声も聞かれます。
果たして、とくし丸の現実はどうなのでしょうか。
この記事では
- とくし丸の現実は赤字なの？
- とくし丸の成功例と失敗例
- とくし丸の開業に向いている人
・・・に関して深堀していきます
とくし丸の現実は赤字なの？
とくし丸のビジネスモデルは、スーパーマーケットが商品を供給し、個人事業主である販売パートナーが軽トラックで地域を巡回販売するというものです。
販売パートナーは売上の一部を手数料として受け取り、スーパーマーケットは新たな顧客層の開拓と社会貢献を果たすという、一見するとWin-Winの関係に見えます。
しかし、このビジネスモデルには、いくつかの課題も存在します。
まず、初期投資の問題です。移動販売用の軽トラックの購入費用や、冷蔵設備などの改装費用は決して安くありません。また、ガソリン代や車両の維持費といったランニングコストも継続的に発生します。
オーナーである販売パートナーの労働時間も長くなりがちです。商品の積み込み、ルートの巡回、販売、売上管理、在庫管理など、多岐にわたる業務を一人で行うため、体力的な負担も大きいと言われています。天候に左右されることも多く、悪天候時には売上が伸び悩む可能性もあります。
これらのコストと労働時間を考慮すると、販売パートナーが十分な利益を確保することは容易ではありません。
特に、顧客の少ない地域や、競合が多い地域では、売上が伸びずに赤字に陥ってしまうケースも存在すると考えられます。
とくし丸の失敗例に学ぶ教訓
とくし丸で赤字に陥ってしまうケースには、いくつかの共通点が見られます。
事前の市場調査不足
安易に「高齢者が多いから需要があるだろう」と判断し、実際に顧客となりうる世帯数や、その地域の購買力などを十分に把握せずに開業してしまうケースです。需要がない地域では、いくら頑張っても売上を伸ばすことは困難です。
顧客とのコミュニケーション不足
とくし丸の強みは、単なる商品の販売だけでなく、地域住民との触れ合いや見守りといった側面も持ち合わせている点です。
しかし、商品の品揃えや価格ばかりに気を取られ、顧客のニーズを汲み取ったり、信頼関係を築いたりすることを怠ってしまうと、顧客離れに繋がります。
例えば、「この商品が欲しい」という顧客の声を聞き入れなかったり、無理な押し売りをしてしまったりするケースは、顧客の不満を招き、結果的に売上減に繋がります。
効率の悪いルート設定
闇雲に走り回るのではなく、効率的に多くの顧客を回れるようなルートを設定することが重要です。無駄な移動時間を減らし、販売に充てる時間を増やすことで、売上向上に繋がります。
スーパーマーケットとの連携不足
商品の品揃えや価格設定、プロモーション活動などにおいて、スーパーマーケットとの連携がうまくいかないと、販売パートナーが孤立し、十分なサポートを受けられない状況に陥る可能性があります。
これらの失敗例から学ぶべき教訓は、「準備と顧客志向」の重要性です。事前の徹底した市場調査と、顧客のニーズを常に把握し、それに応えようとする姿勢が、成功への鍵となります。
とくし丸の成功例から学ぶ戦略
一方で、とくし丸で大きな成功を収めている販売パートナーも数多く存在します。彼らの成功には、どのような秘訣があるのでしょうか。
徹底した顧客との信頼関係構築
単なる移動スーパーとしてではなく、地域の「御用聞き」として、顧客一人ひとりの顔と名前を覚え、好みやニーズを把握し、きめ細やかなサービスを提供しています。
「今日は〇〇さんの好きそうな商品が入荷しましたよ」「調子はどうですか？」といった声かけや、時には商品の配達だけでなく、電球の交換などちょっとした手助けを行うことで、顧客からの信頼を厚くし、リピーターを増やしています。
地域密着型のマーケティング戦略
地域の公民館や集会所、介護施設などと連携し、とくし丸の存在を積極的にアピールしています。また、地域のお祭りやイベントに参加し、顔と名前を覚えてもらうことで、新規顧客の獲得に繋げています。口コミによる評判も、成功には不可欠な要素です。
効率的な運営体制の確立
事前に注文を取ることで、無駄な在庫を減らし、効率的な積載と配送を可能にしています。また、日々の売上や顧客情報をデータとして蓄積し、今後の販売戦略に活かすことで、より顧客のニーズに合致した商品を提供できるようになります。
スーパーマーケットとの良好な連携も成功には不可欠です。
スーパーマーケット側も、販売パートナーの意見を積極的に取り入れ、品揃えや価格設定に反映させることで、より魅力的な商品ラインナップを提供し、販売パートナーをサポートしています。
これらの成功例は、とくし丸が単なる移動販売ビジネスではなく、「地域に根ざしたコミュニティビジネス」であることを示しています。顧客との人間関係を重視し、地域に貢献しようとする姿勢が、結果として事業の成功に繋がっています。
とくし丸の開業に向いている人
人と接することが好きで、コミュニケーション能力が高い人
とくし丸の仕事に非常に向いています。顧客との会話を楽しみ、信頼関係を築けることは、このビジネスの成功に不可欠な要素だからです。高齢者の方々とのコミュニケーションでは、ゆっくりと丁寧に話を聞き、相手のペースに合わせることが大切です。
地道な努力を続けられる人
とくし丸の仕事は、毎日同じことの繰り返しに見えるかもしれませんが、日々のルーティンワークをこなしながら、顧客のニーズの変化に気づき、改善を重ねていく地道な努力が求められます。特に開業当初は、顧客を増やすための努力や、ルート開拓に時間がかかることもあります。
体力に自信があり、健康管理ができる人
商品の積み込みや運搬、長時間の運転など、体力を使う場面も多いため、自身の健康状態を良好に保つことが必要です。
経営者としての視点を持てる人
個人事業主として、売上目標の設定、コスト管理、在庫管理など、経営全般にわたる意識を持つことが重要です。スーパーマーケットからのサポートはあるものの、最終的には自身の経営手腕が問われます。
地域貢献への強い意欲がある人
とくし丸の仕事にやりがいを感じ、継続できるでしょう。「買い物弱者を助けたい」「地域を元気にしたい」という思いが、困難な状況に直面した際のモチベーションとなり、事業を継続する原動力となります。
まとめ
とくし丸は、単に商品を販売するだけでなく、地域に「笑顔」と「安心」を届ける社会貢献性の高いビジネスです。
適切な準備と顧客志向、そして何よりも地域への深い愛情を持つことが、とくし丸の成功への道を切り開く鍵となるでしょう。
