移動販売(スーパー)「とくし丸」での独立開業を考えている人も多いです
買い物難民を救う素晴らしい仕事ではありますが、
一方では・・・
- とくし丸 儲からない
- とくし丸 辞めたい
- とくし丸 トラブル
・・・との情報も目立ちます
この記事では、とくし丸の実態を深堀していきます
移動スーパー「とくし丸」とは?
まず、「とくし丸」のビジネスモデルを簡単に説明しておきましょう。
とくし丸は、オイシックス・ラ・大地グループが展開する移動スーパーです。
提携する地域のスーパーマーケットから商品を仕入れ(厳密には「預かり」、売れ残りは返却)、専用の冷蔵車で個人宅や集会所などを訪問し、商品を販売します。
とくし丸の主な特徴
- 買い物困難者支援: 高齢者や公共交通機関が不便な地域に住む人々など、買い物に困っている「買い物困難者」を主な顧客層としています。2023年5月末時点で、全国に1,129台以上の車両が稼働し、約17万人のお客さまに利用されています。
- 「御用聞き」スタイル: 商品販売だけでなく、お客さまとのコミュニケーションを重視し、世間話や生活の困りごとを聞く「御用聞き」も行います。これにより、お客さまとの信頼関係を築き、販売につなげています。
- 商品ロスが少ない: スーパーマーケットから商品を預かり販売するため、売れ残った商品はスーパーに返品できる仕組みになっており、通常の小売業に比べて食品ロスや在庫リスクが非常に少ないのが特徴です。
- 個人事業主としての開業: とくし丸の販売パートナーは、提携スーパーと業務委託契約を結ぶ個人事業主です。そのため、自身の裁量で働くことができます。
「とくし丸は儲からない」という声の真偽
「とくし丸は儲からない」という声は、一部では聞かれるものの、一概にそうとは言えません。
個人の頑張りや運営次第で収益は大きく変わります。
収益モデルと実際の平均年収
とくし丸の収益は、完全出来高制です。
販売手数料は提携スーパーによって異なりますが、一般的に売上に対して一定の割合(約18~20%前後と言われています)が販売パートナーの収入となります。
2023年9月~2024年9月の集計データ(対象1189台)によると、とくし丸オーナーの全国平均年収は550万円とされており、未経験者でも年収600万円を超える方も多数いると公式情報で提示されています。
週6日稼働時の全国平均日販(1日の販売金額)は10万円とされています。
この数字を見る限り、決して「儲からない」とは言い切れません。
しかし、これはあくまで平均値であり、以下の要因によって収益に差が出ます。
収益が伸び悩む可能性のある要因
研修期間中の収入はゼロ:
とくし丸の研修期間(約6~7週間)は給与が発生しません。この期間は車両の購入・リースや備品の準備などで出費があるため、最初の収入が入るまでの約2ヶ月間の生活費を確保しておく必要があります。
拘束時間の長さ:
公式サイトのモデルケースでは、朝7時半から夕方6時半までのスケジュールが紹介されています。これに加えて商品の積み込みや売上計算、事務作業なども発生するため、実働時間は長くなる傾向があります。自由な働き方を求めても、稼ぐためにはそれなりの時間を投入する必要があります。
初期投資とランニングコスト:
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- 車両費: とくし丸専用車両の購入費は約370万~400万円です(リースも可能)。頭金やローン、あるいは一括購入の資金が必要です。
- その他開業資金: 食品衛生責任者養成講習費(約1万円)、車両オプション(保冷ボックス、雨よけ、ドラレコなど8~10万円)、諸雑費(ユニフォーム、金庫、カゴ、研修交通費など約10万円)がかかります。
- ランニングコスト: ガソリン代、車両の維持費、任意保険料、ロイヤリティ(SV手数料)などが発生します。売上が伸びないと、これらの経費が重くのしかかる可能性があります。
顧客開拓とルート構築の難しさ:
最初から安定した顧客がいるわけではなく、自身でルートを開拓し、顧客を増やしていく必要があります。高齢者が多い地域でも、全員がすぐに利用してくれるわけではありません。地域住民との信頼関係構築には時間がかかります。
エリアの特性と競合:
担当するエリアの高齢化の進行度合い、住民の購買力、近隣のスーパーや競合する移動販売の有無なども収益に影響します。過疎化が進みすぎた地域では、そもそも顧客数が少ない可能性もあります。
売上増加に比例しない手間:
売上が増えれば手取りは増えますが、商品の積み込み量や顧客対応の時間も増えるため、労働時間や肉体的な負担も増加します。
とくし丸「儲からない」と感じる人の背景
上記のような要因から、「儲からない」と感じる人は、以下のような状況に陥っている可能性があります。
- 顧客開拓が進まず、売上が伸び悩んでいる
- 想定以上に労働時間が長くなり、時給換算で割に合わないと感じている
- 初期投資やランニングコストが重く、手元に残る金額が少ない
- 地域特性と自身の努力がマッチしていない
しかし、逆に言えば、顧客開拓を頑張り、効率的なルートを構築し、丁寧な接客で信頼を得られれば、十分な収益を得られるビジネスモデルであるとも言えます。
「とくし丸を辞めたい」という声の背景
「とくし丸を辞めたい」という声は、主に上記で述べた「儲からない」という金銭的な理由のほか、以下のような理由から発生することが考えられます。
肉体的・精神的な負担:
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- 長時間労働: 上述の通り、商品の積載から販売、売上計算まで、一人で行う作業が多く、拘束時間が長くなりがちです。
- 体力仕事: 重い商品の積み下ろし、狭い車内での作業、悪天候時の販売など、体力的な消耗が大きいです。
- 孤独感: 基本的に一人での業務となるため、会社員時代のような同僚との交流が少なく、孤独を感じることがあります。
- 人間関係のストレス: お客さまとの関係は良好であるケースが多いですが、中には理不尽な要求をする方や、心無い言葉を投げかける方もいるかもしれません。
売上のプレッシャー:
個人事業主であるため、売上が直接収入に結びつきます。目標売上を達成できない日が続くと、精神的なプレッシャーが大きくなります。
ルーティンワークへの飽き:
毎日同じルートを回り、同じような商品を販売するルーティンワークに、新鮮さややりがいを見出せなくなるケースもあります。
プライベートとの両立の難しさ:
頑張れば稼げる一方で、稼ぐために働く時間が長くなると、家族との時間や趣味の時間を確保しにくくなることもあります。
地域特性と合わない:
自身の性格や販売スタイルが、担当地域の住民のニーズや文化に合わないと感じる場合もあります。
これらの要因は、とくし丸に限らず、個人事業主として開業する際に共通して直面する課題でもあります。
開業前にこれらの可能性を十分に認識し、自分自身の性格やライフスタイルに合っているかを見極めることが重要です。
「とくし丸でのトラブル」について
とくし丸で発生するトラブルには、主に以下の種類が考えられます。
2023年度には、高齢者の消費者トラブルに関する取り組みも行われていました。
- 顧客とのトラブル
- 金銭トラブル: お金のやり取りにおける認識のずれ、お釣りに関する問題、高齢者の記憶違いなど。
- 商品に関するトラブル: 鮮度や品質に関するクレーム、商品の渡し間違い、注文と違う商品を提供してしまったなど。
- コミュニケーションの行き違い: お客さまの要望を正確に聞き取れなかった、誤解を与えてしまった、世間話の範囲を超えて深入りしてしまった、など。
- 消費者トラブルへの関与: とくし丸の販売パートナーは、高齢者と接する機会が多いため、高齢者が巻き込まれる詐欺や悪質商法(オレオレ詐欺、キャッシュカード詐欺、リフォーム詐欺、投資詐欺、還付金詐欺、訪問買取など)の兆候を察知する役割も期待されています。2022年5月~2023年2月には、消費者庁から委託を受け、販売員が高齢者の消費者トラブルを調査・情報共有する取り組みも行われていました。この中で、パートナーがトラブルに巻き込まれる可能性もゼロではありません。
- 車両・運搬に関するトラブル
- 交通事故: 移動販売車での運転中の事故。
- 車両の故障: 冷蔵機能の不具合やエンジントラブルなど、車両の故障による販売機会の損失や修理費用の発生。
- 商品の破損・汚損: 運搬中の揺れや不手際による商品の破損や汚損。
- スーパーマーケットとのトラブル
- 商品の返品に関する問題: 売れ残り品の返品ルールや、鮮度に関する認識のずれなど。
- 販売手数料に関する問題: 計算ミスや支払い遅延など。
- 連絡の行き違い: 商品の準備やルートに関する連絡ミスなど。
- 個人事業主としてのトラブル
- 体調不良: 個人の体調不良による欠勤、それに伴う収入減。
- 税務・会計に関する問題: 確定申告や帳簿付けなど、個人事業主としての事務作業の負担や不慣れによるトラブル。
トラブルを未然に防ぐための対策
- 丁寧な接客とコミュニケーション: お客さまの要望を正確に確認し、常に笑顔で対応することを心がける。
- 確認の徹底: お金の授受や商品の受け渡し時は、必ず指差し呼称や声出し確認を行う。
- 車両の日常点検: 運行前点検を怠らず、異変があればすぐに整備士に相談する。
- 契約内容の確認: スーパーマーケットとの業務委託契約書の内容を熟読し、不明点は事前に解消しておく。
- 健康管理: 体調不良は業務に直結するため、日頃から体調管理に気を配る。
- 情報共有と相談: とくし丸本部や提携スーパーの担当者、他の販売パートナーと積極的に情報交換し、困ったことがあればすぐに相談できる体制を築く。特に消費者トラブルの兆候があれば、迅速に関係機関に報告する。
まとめ:とくし丸・開業の成功に向けて
2025年度もとくし丸は順調に台数を増やしており、ニーズは高まっています。
ネガティブな声はどのビジネスにも存在するものです。
重要なのは、そうした声の背景にある具体的な課題を理解し、それに対して自身がどう準備し、対処できるかを見極めることです。
事業説明会に参加するなどして、より詳細な情報を得て、ご自身の開業プランを具体化されることをお勧めします。